
発行元:小学館
シナリオ・記事:小田ビンチ
まんが:坂元 勲
監修:田村 大

たまたま空いた時間に目が止まったので読んでみた。
まったく知らない人に説明しようとすると曖昧になりすぎたり煩雑になりがちなデザイン思考のプロセスを、思っていたよりも簡潔にシンプルにとらえて、順を追って咀嚼していける切り口になっていると思った。
ベースは、スタンフォードのDスクールや最初に提唱したIDEOのメソッドのような、基本的な「デザインシンキング」と言われるものに基づいているようだ。
FITでUXデザインのコースをとったときも、まったく同じようなプロセスだった。
以下はあらすじ。メモ程度。
まずは創造的覚悟をせよ
主人公はとあるカフェチェーンの社員。ある日、赤字続きの店舗の店長への異動を命じられる。
その赤字をいかに挽回するかがこの物語のストーリーラインだが、主人公には自信がない。そこに、客として現れた大手企業の会長が、アドバイスとしてデザイン思考を提案。
半信半疑な主人公に、まず覚悟をして「自分には世界を変える想像力がある」と思い込む必要があると教える。
ステップ1:着想する
潜在的ニーズを見つけ出す
ユーザーを観察する
より本質的なニーズを見つけるために、ユーザーを観察する。
ただし、客の声を安易に信じるのは危険。なぜなら客は「未来」を知らない。自分の知っている現実と比較するだけなので、そこからイノベーションは生まれない。
重要なのは、人の心を満たすこと
料理が美味しいから売れるのではなく、料理が美味しいのが「嬉しい」から売れる。
この世のモノ・サービスはすべて対象となる「人の心」をポジティブにするために存在する。
イノベーションは、見ることから始まる。
普通を見直す
本人も気づいていない欲求を、見逃さず察知する
人は無意識に楽な方・快適な方に向かおうとする。本人が認識していなくても、そこに欲求があるならば必ず行動に現れる。
自分の思い込みを捨て、その光景を初めてみるかのような気持ちで謙虚に観察する。
観察補助ツール「共感マップ」
自分の感情を捨てて観察対象に共感するのを促すため、「SAY」「DO」「THINK」「FEEL」の4つの観点でメモしていく。
ユーザーの行動や感情を観察し、ポジティブやネガティブに分類。そこには潜在的ニーズが存在する可能性がある。
見つけ出した不便な経験を快適な経験へ、平凡な経験を非凡な経験へ、ネガティブな経験をポジティブな経験に転換していくことが、「経験をデザインする」ということである。
カスタマージャーニーでより具体的に
観察結果をもとに、カスタマージャーニーを作成。
より細かく、具体的にユーザーを観察し、デザイン機会を見つけていく。
このタイミングで、必要に応じてユーザーにインタビューを実施し、「なぜその行動をとったか」についてさらに深堀していく。
時にはエクストリームユーザーを観察することも、ニーズを見つけるのに大変助けになる。
ステップ2:発案する
ブレインストーミングでアイデアを創造する
チームでアイデア出しすることが重要
観察結果をもとに、テーマを設定してチームでアイデア出しをする。
自由に発想し活発なブレインストーミングをするための方法として、
- ニックネームで呼び合い上下関係の意識を薄める
- 人事評価される恐怖と恥をかく恐怖を取り除く(決して否定しない)
- 初期段階では、質より量を重視する
- テーマ設定はアイデアが出しやすいものを
- アイデアの数をカウントしてモチベーションアップ
- 場の勢いを止めないために必要に応じてテーマを変える
- 他者のアイデアを批評するときは個人的な希望に昇華
- 他者のアイデアを踏み台にして飛躍
等が紹介されている。
次の段階に進めるアイデアはチーム投票
アイデアをじっくり吟味して、「前に進めたいアイデア」をチーム投票で決める。
プロトタイピングで検証する
プロトタイピングは魔物
要は試作品。ただし、「失敗してもOK」なものにしておく必要あり。
1回のプロトタイピングに時間をかければかけるほど、「失敗が許されないもの」になっていくため注意が必要。
あくまでも検証段階のため、「この案はダメだ」と分かったときに止められない状況は絶対に避ける。
可能な限り安く、速く
最初はコンセプトを検証できる部分だけ作ればよい。
今すぐ素早くやり、小さく失敗をすることが重要。
大きな失敗をすると立ち上がれないが、小さな失敗は次への活力になる。
生みの苦しみ
商品化に向けて最終段階までくると、コンセプトが商品になろうとする「生みの苦しみ」がつきもの。
モノ・サービスを生み出すときに考慮すべき3つの要素、
- 技術的実現性
- 経済的実現性
- 有用性
これらが相反することがあるので、これら三要素すべてのバランスを取る解を探す。
満たすのではなく、バランスを取る。
ステップ3:実現する
プレゼンテーションで市場への導入を成功させる
イノベーションは本質的に保守的である経営層の支持を得にくい
そもそもイノベーションは、今までの常識では測れないもの、全員が「なるほど」というものにはならない。
経営層を納得させ、共感させ、親しみを感じさせるよう、プレゼンテーションではオーディエンスをその商品アイデアのファンにする必要がある。
小規模導入から市場投入に向けてのプロセス
まずはプロトタイピング終盤で実際の顧客の反応を観察し、そこで得た情報をもとにブレインストーミング、改善策の考案をし、ブラッシュアップしていく。ある意味市場を巻き込んで行うプロトタイピング。
そこで行為的な評価を受けることができれば、チームは成功を確信でき、経営陣への協力なアピールにもなる。
まとめ
この本では、赤字店舗にとばされた主人公が、デザイン思考を使ってイノベーティブな商品とサービスを発案し、会社での導入承認を得るまでが描かれている。
どんな商品が生まれたのか、気になる方はぜひ読んでみてください。