バーンズ・ファウンデーションに行って、その展示作品数の多さにびっくり!!
個人のコレクションとは思えない、有名作家ばかりの圧倒的な展示でおなかいっぱいになりました
目次
- 1 バーンズ・ファウンデーションとは
- 2 圧倒的な数のコレクションが所狭しと展示!
- 3 おもな作家・作品の紹介
- 3.1 作品の説明ラベルがない! どうやって見る?
- 3.2 有名作家の作品例
- 3.2.1 形と色の革命家 セザンヌ(Paul Cézanne)
- 3.2.2 日常の輝きを捉える画家 ルノアール(Pierre-Auguste Renoir)
- 3.2.3 生命のリズムを描く色彩の魔術師 アンリ・マティス(Henri Matisse)
- 3.2.4 形を破り新たな美を創造 ピカソ(Pablo Picasso)
- 3.2.5 鮮烈な色彩と情熱の詩人 ゴッホ(Vincent van Gogh)
- 3.2.6 夢見る心で未開の自然を描く アンリ・ルソー(Henri Rousseau)
- 3.2.7 静寂の中の神秘と時間を超える風景 キリコ(Giorgio de Chirico)
- 3.2.8 光を追い求め時間を描く モネ(Claude Monet)
- 3.2.9 パリの静けさと哀愁の記録者 ユトリロ(Maurice Utrillo)
- 4 結論:行くべし。貴重なアートの洪水に溺れられる
バーンズ・ファウンデーションとは
フィラデルフィアのターミナル駅から徒歩20分
ニューヨークからアムトラックで1時間半、フィラデルフィアのターミナル駅「30th Street」から徒歩20分のところにある。
周りにはアメリカトップクラスの規模を誇るフィラデルフィア美術館(Philadelphia Museum of Art)や、彫刻で有名なロダン美術館(Rodin Museum)もあり、ニューヨークから日帰りで美術館めぐりをするのにはピッタリのロケーション。
アルバート・C・バーンズが自らのコレクションをもとに設立
バーンズ・ファウンデーション(Barnes Foundation)は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアにある芸術教育および展示施設。
化学者であり、アートコレクターでもあるアルバート・C・バーンズ(1872〜1951年)によって1922年に設立された。
彼の独特な視点で集められた作品群は、20世紀初頭の美術界における重要な変遷を映し出している。
バーンズは自らのコレクションを教育目的で使用することを望み、それがこのファウンデーションの主な目的となっている。
もともとはフィラデルフィア郊外のメリオンにあったが、2012年にフィラデルフィアの中心部に新しい施設へと移転。
この新しい施設では、バーンズのコレクションがより広い公衆に公開され、教育プログラムや展示会が開催されている。
美術愛好家だけでなく、広く一般の人々にもアートを通じた教育と啓発を目的としている。
また、バーンズの芸術に対する哲学的アプローチを反映した展示方法で知られている。
どんな作品がどれくらいある?
バーンズ・ファウンデーションには、約3,000点以上の芸術作品が収蔵されている。
印象派、ポスト印象派、初期の近代絵画(モダニスト)に重点を置いた作品が含まれており、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソなど、19世紀後半から20世紀初頭の著名な画家の作品が多数ある。
また、絵画だけでなく、彫刻、金属工芸品、陶磁器、古代からの美術品、さらには家具や装飾的な物品も含まれている。
絵画コレクションに関して言えば、具体的な絵画作品の数は変動することもあるが、特に以下のような著名な画家の作品で知られている:
- ルノワールの作品が180点以上
- セザンヌの作品が69点
- マティスの作品が59点
- ピカソの作品が46点
これらの数字は、バーンズ・ファウンデーションが持つ特定の画家の作品数の一例。
総合すると、絵画作品だけでも非常に多岐にわたるコレクションがあることがわかる。
このコレクションは世界で最も重要な私的美術コレクションの一つと考えられている。
圧倒的な数のコレクションが所狭しと展示!
期待感が高まる、洗練されたエントランス
個人のコレクションと聞いて一軒家のような建物を想像していたが、もはや大規模な美術館さながらの様相。
エントランスから建物に入っていくまでのアプローチを歩きながら、より期待感が高まる。
入口も大きく、もはやこれがフィラデルフィア美術館なのではと思ってしまうほどの規模。
ロビーも広くゆったりとしていて、天井が高く、自然光が入り、とても開放的な雰囲気。
展示室の入り口では、アルバート・C・バーンズ博士がお出迎え
展示室の始まる場所では、まずはアルバート・C・バーンズ博士の肖像画が訪問者を出迎える
これはキリコ(Giorgio de Chirico)の描いたもので、背後に見えるキリコの作品(マネキンのような絵)は、6番の展示室で実際に見ることができる。
博士への挨拶をすませて展示室に入っていくと、そこには想像もしていなかった世界が広がっている。
奇想天外!アルバート・C・バーンズ独自の展示方法
メインギャラリーには23の展示室がある。
アルバート・C・バーンズ博士が設計した独特な展示方法に従って、23の展示室は美術作品を「アンサンブル」として配置している。
この配置方法は、作品同士の対話を促し、異なる時代や地域、スタイルの作品が互いに関連しあっていることを示すらしい。
各展示室は、色、形、線、光などの視覚的要素を通じて、芸術作品間の内在的な関係を探求するよう設計されているらしい。
展示室に入ってまず驚かされたのは、作品同士が近い!!
美術館の場合、もっと作品同士の間に距離をとって置かれていると思うが、このバーンズ・ファウンデーションでは1つ1つの作品の間隔、隙間がほとんどない。
そして近づいて見てみると、それら1つ1つがとっても有名な作家の作品!
複数の作品が一度に視界に入ってくるので、どこを見ればよいのか分からない。
せっかくのピカソ、集中して見たいと思って、1つ1つを味わおうとする間もなくすぐに隣の作品が注意をひいてくる。
多くの展示では左右対称だったり、幾何学的な配置だったり、規則的に作品が並べられていて(めちゃめちゃ近接しながら!)、見ているうちに「アルバート博士は、コレクションした作品を使って自分の作品を作ったんだなあ」と感じた。
ヨーロッパの作品が多いが、かと思えばセンターにアジアの作品があったりと、一見関連性のなさそうな並べ方もされている。
所要時間の目安
各展示室ごとに独自の方法で並べられた展示が、1階と2階に何部屋も続く。
23の展示室、気になる作品をチェックしつつ、ときに飛ばしながら回ったとしても1時間半〜2時間はかかるくらいのボリューム感。
とにかく作品数が多い!
おもな作家・作品の紹介
作品の説明ラベルがない! どうやって見る?
バーンス・ファウンデーションでは、独自の展示方法を用いていることから、通常の美術館で作品の横にあるような、説明ラベルがない。
入り口に用意されているQRコードからいける特設サイトにアクセスし、スマホで作品をスキャンすると各作品の詳しい説明を見ることができる。
また、額縁の下部をよく見ると、その作品の作家名が書かれた小さなプレートが貼り付けられているので、そこを見ると誰の作品か分かる。
有名作家の作品例
形と色の革命家 セザンヌ(Paul Cézanne)
セザンヌは1839年にフランスで生まれ、1906年に亡くなった。
印象派からポスト印象派への移行期に活躍したフランスの画家で、彼の作品は、色彩と形の解析に重点を置いており、後のキュビズムやモダンアートへの道を開いた。
自然や物体を幾何学的な形に分解して描く手法を用い、このアプローチは後にキュビズムへと発展した。
セザンヌの作品は、視覚的な体験を通じて世界を理解しようとする試みと見なされており、「形の父」とも呼ばれる。代表作には「サント・ヴィクトワール山」シリーズがある。
バーンズ・ファウンデーションでは、リンゴなどの静物画だけではない、セザンヌの描く人物画も複数見ることができる。
こんなに一度にセザンヌを目にする機会、本当に稀だと思う!
日常の輝きを捉える画家 ルノアール(Pierre-Auguste Renoir)
1841年にフランスで生まれ、1919年没。
印象派の代表的な画家の一人で、日常生活の光と色を捉えた繊細な描写で知られている。生き生きとした人物描写と明るい色彩が特徴。
印象派運動の中心人物の一人でm彼の作品は、光の効果と色彩の鮮やかさ、そして人物の温かみのある描写でられる。特に女性や子供のポートレート、日常生活の風景を愛好し、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」などの作品で知られている。
生命のリズムを描く色彩の魔術師 アンリ・マティス(Henri Matisse)
マティスは1869年にフランスで生まれ、1954年に亡くなった。
色彩のマスターとして知られるフランスの画家で、フォーヴィズムの代表的人物。彼の作品は、大胆な色彩とシンプルな形で表現される生命力に満ちている。
フォーヴィズムのリーダーとして知られ、鮮やかな色彩と大胆な形で表現される作品を多く残した。
マティスの作品は、見る者に強烈な視覚的喜びを提供し、ニューヨークのMoMAに展示されている「ダンス」も代表作の一つ。
マティスの作品も、たくさん見ることができる。
作風が異なるものたくさんあり、時代によってマティスが向き合っていた画風やオブジェクトの変化があり興味深い。
建物内の1階から2階に吹き抜けている壁面にも、躍動感のあるマティスの作品が描かれている。
形を破り新たな美を創造 ピカソ(Pablo Picasso)
言わずと知れたピカソ。1881年にスペインで生まれ、1973年没。
20世紀を代表する画家であり、キュビズムの共同創始者。彼の革新的な作品は、形と空間の概念を根本から変えた。
作品は美術の歴史に大きな影響を与え、その後も様々なスタイルとテクニックを探求し続けた。
代表作には「ゲルニカ」や「アヴィニョンの娘たち」がある。
バーンズ・ファウンデーションには壁を覆う大きな作品から、手のひらサイズの小さな作品まで多数あり、また完成された絵画だけでなくスケッチ等時代の異なるものなど、多岐にわたる圧巻のコレクション。
鮮烈な色彩と情熱の詩人 ゴッホ(Vincent van Gogh)
ニューヨークでも大人気のポスト印象派の画家ゴッホ。1853年にオランダで生まれ、1890年没。
その情熱的な筆致と鮮やかな色彩で知られている。
彼は生涯で2,000点以上の芸術作品を制作し、その中には900点以上の絵画と1,100点以上のスケッチと素描が含まれる。鮮やかな色彩と感情的な筆致で知られており、「星月夜」「ひまわり」などが代表作。内面的な感情と強烈な色彩の使用で高く評価されている。
夢見る心で未開の自然を描く アンリ・ルソー(Henri Rousseau)
ルソーは1844年にフランスで生まれ、1910年に亡くなった。
彼は素朴派の画家として分類されることが多いが、すごいのは、自己学習による画家で、独学で絵画を学んだそう。
その原始的で夢幻的な風景やジャングルの風景や神話的なシーンで知られていて、「夢」が代表作。
彼の直接的で純粋な表現は、多くの前衛的な芸術家たちに影響を与えたとのこと。
緻密でビビッドなタッチで、ジャングルに動物が出てくることも多く、個人的にけっこう好き。
静寂の中の神秘と時間を超える風景 キリコ(Giorgio de Chirico)
キリコは1888年にギリシャで生まれ、1978年にイタリアで亡くなった。
メタフィジカル・ペインティングの創始者であり、その神秘的な風景と静寂な雰囲気の作品で知られている。
キリコの作品は、シュルレアリスム運動に大きな影響を与えたとのこと。代表作には「トリノの謎と哀愁」がある。
キリコの絵、かなり不思議ちゃんのものが多い!でもそれが面白い。
冒頭のアルバート・C・バーンズ博士の肖像画もキリコによるもので、その背景に描き込まれている絵画も、博士のコレクションの一部。要はここで見ることができる。
光を追い求め時間を描く モネ(Claude Monet)
1840年にフランスで生まれ、1926年没。
印象派の先駆者で、光と色の変化を捉えることに専念し、自然界の移り変わりを描いた連作で知られる。
モネの「睡蓮」シリーズは、彼の庭にある池を題材にした一連の作品で、彼の芸術的探求の頂点を示している。
みんな大好きモネ!作品数は少なくも、いくつかこのバーンズ・ファウンデーションにもあった。
モネの人物がは初めて見たかも。これはモネのパトロンさんの肖像画だそう。
パリの静けさと哀愁の記録者 ユトリロ(Maurice Utrillo)
1883年にフランスで生まれ、1955年没。パリの街並みを主題にした作品で知られるフランスの画家。
主にモンマルトル地区の風景を題材にし、その独特なスタイルで知られるようになった。
ユトリロの作品は、都市の静けさと孤独を感じさせるものが多く、彼の描く静かで哀愁を帯びた風景は、多くの人々を魅了している。
結論:行くべし。貴重なアートの洪水に溺れられる
1人のお金持ちのコレクションと思いきや、怒涛に襲いかかってくるかのようなアートの洪水に、後半はもうおなかいっぱいになった。
このあとフィラデルフィア美術館にも行ったのだが、モダンアートのカテゴリは、正直こちらのほうが見応えがあるのではないかと思ったほど。
フィラデルフィアに行く人には絶対オススメしたい。